東大英語の要約問題は「学力」を測る試験

東大英語の要約問題は「学力」を測る試験

2021年 10月 27日

東大の入試問題を長年研究・指導されてきた竹岡広信先生に、東大英語の伝統ともいうべき「要約問題」について語っていただきました。

 

―――なぜ東大は英語の試験に要約問題を出すのでしょうか?

竹岡 東大の要約問題は、昔から「英語の試験なのになぜ日本語で要約させるのか」という批判がなされてきました。しかし、そもそも、「英語の試験なのに」という大前提が、間違っているのではないでしょうか。

東大が測りたいのは、単なる「英語運用力」だけではなくて「学力」なのです。たとえば、帰国子女で英語運用力が高い生徒がいても、「学力」が不十分な場合、東大の要約問題のような問題には太刀打ちできないのではないでしょうか。

東大が出す上質な英文を80字程度に要約するには、読んだ英文の「言いたいこと」を抽出する力、論理を構成する力、長い文を漢字を駆使して字数を削って簡潔にまとめる力などが要求されます。だからこそ、東大はこの問題を第1問に据えることで「英語が流暢に話せるだけの人や、TOEICや英検のスコアだけが良い人は要りませんよ」と門前払いしているのだと、私は感じるのです。

世の中の親たちが、自分たちの子どもに小さいうちから英検を取らせようと必死になっている姿には少し哀れさえ感じます。もちろん英検はとてもよく練られた問題で、私も英検マニアの1人ではありますが、英検に合格することばかりに必死になるのは勿体ないと思うのです。子どもたちが、その時間のいくらかでも読書にあてれば「学力」を伸ばすことができるのに。「英語運用力」などいつでも伸ばせますが、「学力」はそうはいかないのです。

 

―――今回、『東大の英語 要約問題 UNLIMITED』を書こうと思ったきっかけはなんですか?

竹岡 『東大の英語27カ年』を書かせて頂き、あたらめて東大の要約問題の面白さを知り、「もっと前の過去問も知りたい!」という衝動に突き動かされました。昔から収集癖(1960年以前の切手や、遊戯王カードなど)があることも少なからず影響していると思います。

また,自分自身が令和3年に還暦を迎え、「赤本」で「60年(正しくは61年だが)」という洒落も面白いなと思いました。

 

―――本書は、どのように使うと良いでしょうか?

竹岡 

1.まず手に取って頂き、気が向いた所を「エイヤー」と開けてください。

2.12分という時間を計って、どれくらいできるか確認してください。

3.最初は字数制限の1.5倍ぐらいの分量で書いて、その後、情報を削らず字数制限内に収めます。

4.解答を書き上げたら、解説や解答は見ないで、今一度英文を精読してください。

5.納得のいく答えが書けたら、解説・解答を見て自己採点してください。本書では、竹岡独自の採点基準を掲載したので、参考にしてみてください。

 

―――過去61年分の問題で、印象的な問題はありましたか?

竹岡

2016年度「社会が結束する要因」:「組織は家族のようなものだ」という常識を切り捨てる問題

2005年度「身体のリズム感や調和力の維持の仕方」:大半の生徒が第1文の解釈を間違えた問題

1992年度「大学生にとっての蛍光ペンの影響」:明快な文だが、意外に生徒の出来が悪くて授業で何十回と使った。

1984年度「初等教育で歴史を教える意義」:途中にあるNot so の理解がすべての文。

1964年度「普通教育が及ぼす悪影響」:東大が尖っていた時代の問題

他にも、東大の英文は、面白いものばかりです。この本を手に取って、じっくり味わっていただきたいです。

 

 

『東大の英語 要約問題 UNLIMITED』好評発売中!

 

 

―――受験生にメッセージをお願いいたします。

竹岡 昔から「要約をすると力がつく」と言われていますが、本当にその通りだと思います。まずしっかり精読しなければいけません。精読が出来ていない人は予選落ちでしょう。次に筆者の「言いたいこと」を必死に考えます。抽象的な部分は、噛み砕いて分かりやすい言葉で言い換え、冗長な部分は漢字力や国語力を駆使して簡潔に言い換える。しかも以上の作業を12分ぐらいで完結しなければならない。この約60題に必死に食らいつき力を伸ばしてもらいたいと願います。

 

 

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