第1回 入試対策のスタートライン(前編)

第1回 入試対策のスタートライン(前編)

2021年 04月 27日

共通テストにおいて、地理は暗記事項が少ないという理由で対策が後回しになりがちな科目です。その一方で、一定以上の高得点を取りづらい科目ともされています。 そんな共通テスト地理で高得点を取るための心構えや方法を、中土居先生が解説します! 今回は、全4回のうちの第1回(前編)です。

※トップ画像のイラストは先生がフリーハンドで描いてくださいました。お見事……。


こんにちは! 中土居です。これから、少しでも受験生の皆さんの役に立てるよう、地理の面白さや勉強方法などについて楽しく書いていきたいと思います。

早速ですが、共通テストの問題はもう解いてみましたか? 共通テストではどんな問題が出て、それに対してどんな対策を取ればよいのでしょうか。第1回(前編)では、共通テスト地理対策のスタートラインとして、実際の問題を取り上げつつ解答と対策のポイントを提案します。

 

   

「トランプ元大統領の掲げた政策」が問われた!?

2021年に実施された共通テスト(第1日程)の地理Bでは、アメリカ大統領選挙をテーマとして取り上げた出題がありました。問題は、2012年と2016年のアメリカ大統領選挙の結果(各州での共和党あるいは民主党の選挙人獲得状況)が地図で示され、その図に関する説明文中の空欄に当てはまる適切な語句の組合せを選択肢から選ぶという内容です。(実際の問題はこちら!)

アメリカ大統領選挙は2020年にも行われ、日本でも大きく報じられていたので、一度は耳にしたことがあると思います。こういう身近なテーマの問題は、疎遠に感じがちな堅苦しい統計の問題よりもずっと解くのが楽しいですよね! 共通テスト地理では、こうした生活に身近な題材がいくつも取り上げられています

しかし、もちろん時事の詳細や政治・経済の細かな知識をクイズ的に問うものではなく、時事的テーマを切り口として、地理的な知識理解や読解力などを問う問題になっています。

◆ 解答プロセス ◆
1.「民主党の候補者が選挙人を獲得した州は( ラ )に多い」

 解法  ほぼ読解のみ

→ 地図から、2012年・2016年のどちらも民主党( )が多い地域を読み取るだけ!

→ どちらも多いのは北東部の州や西海岸の州

つまり、( ラ )=「ニューイングランドや西海岸」が当てはまる!

※ニューイングランド:イギリス植民地として早くから開拓された、メーン・ニューハンプシャー・ヴァーモント・マサチューセッツ・ロードアイランド・コネティカットといった北東部の州のこと。

2.「五大湖沿岸の地域では…2016年には共和党の候補者が選挙人を獲得した州が多く分布する。これは、グローバル化の影響で衰退したこの地域の製造業について、共和党の候補者が( リ )政策を主張したことなどが大きく影響した」

 解法  読解のみでも○(+知識理解なら◎)

→ 共和党の候補者(=トランプ元大統領)が主張した政策を知っていれば楽に解ける(a)が、知らなくても「グローバル化のせいで衰退した地域にとって都合のよい政策」が当てはまると文脈から推測できる(b)ため、グローバル化を促すのではなく、抑える政策が当てはまると考えられる。

したがって、( リ )=「工場の海外移転を抑制する」が当てはまる!

※もう一方の選択肢にある「移民労働力を増やす」(受け入れる)のは、逆にグローバル化を促すことにつながるため×。

➡正解:④

もちろん、普段の授業を通じて得られる、五大湖沿岸の地域の工業発展についての地理的な知識理解があれば、それをもとに解くこともできる(c)

 

 

   

「勝手な想像からの失点」、ありませんか?

さて、この問題を解くのにどういう力が重要だと思いましたか? 恐らく、読解力とか「思考力」的なものが重要だろうと、なんとなく感じたと思います。

確かにその通り、この問いで求められているのは図を読み取り、説明文の文脈から空欄を推測する思考プロセス(b)です。各州の選挙結果やトランプ元大統領が掲げた政策の細かな内容といった具体的事実をあらかじめ暗記しておいてそれだけで解いた(a)という受験生はほぼ皆無でしょうし、出題者側もそんな解き方は求めていないはずです。センター試験にもこうした傾向はありましたが、共通テストではその傾向がより強まっているといえます。

だったら皆さんがこれから最初に身につけるべき力は思考力なのかというと、そうでもありません。そもそも適切に思考することの大々々前提に知識理解が必要だからです。何の知識的裏付けもない思考は空虚な独断論で、自分勝手なイメージです。模試や問題演習の際、根拠もなく想像を膨らませて変な結論に至って失点しちゃった、なんて経験はありませんか?

模試でも本番でも、常に安定して高得点を取りたいのであれば「ふわっとしたイメージでなんとなく解く」というスタイルから脱却する必要があります

 

   

知識と思考は1セット!

では、どうすれば安定的に得点できるのか。それは、「説明文や図表の特徴を適切に読み取るとともに、確固たる知識理解と結びつけて解く」に尽きます。例題の解法にあわせていえば「地理的な知識理解(c)を土台として、説明文の文脈からの推測(b)と組み合わせて解く」です。共通テストの主旨や問題の傾向からすると、(b)のようなプロセスのみで解ける問題も少なくありません(むしろセンター試験と比べると明らかに多いです)が、いかに安定的に得点するかという観点では、やはり「(c)(b)」が理想的です。 ちなみに、例題に関する(c)とは次のような内容です。

五大湖沿岸地域の工業の展開

  ■ 第二次世界大戦以前  
  鉄鋼業などの重工業が発達  
  (豊富な資源や水運の便が背景)  
     
  ■ 第二次世界大戦以降  
  グローバル化の進行  
         
  自由貿易拡大と欧州や日本の工業化  
   

 

国内製造業の競争力低下

(鉄鋼業や自動車産業など)

 

   

 

安価な労働力などを求めた

工場の海外移転の増加

 

   
 

産業の空洞化、脱工業化の進行により

製造業を基盤とする五大湖沿岸地域に打撃

(雇用の減少や失業者の増加など)

 
     
 

※また、1950年代頃からは国内各地で移民労働力の受け入れが増加した。しかし、雇用の圧迫や治安悪化の懸念から、地域によっては受け入れに否定的な意見がある。

 
     

五大湖沿岸地域ではグローバル化(自由貿易の拡大や工場の海外移転など)に対して批判的な有権者が他州と比べて多かったため、トランプ元大統領が主張した「アメリカ第一主義」(反グローバル化政策)が支持されたというわけです。

これは高校地理で学習する一般的な内容です。決して特別に細かく、深く掘り下げた内容ではありません。確固たる知識を上手く使って解けば、資料や文脈の読解だけで解くよりも確実に得点することができるのです。

 

 

第1回(前編)のまとめ

今回は実際の出題を取り上げて、解答や対策にあたっての意識の置き所について確認しました。簡単にいえば、安定的高得点という究極の目標に向けて最優先なのは知識理解の充実であるということ。当たり前すぎることを書いていますが、案外多くの受験生が見落とし、曖昧にしがちなことだと感じています。

後編ではもう少し具体的に、現実的かつ効果的な対策(勉強法)を伝授します。その上で、これから本番までの残り約10カ月間の中・長期プランを提案しますので、ぜひ参考にしてみてください!

 

 

 

中土居 宏樹(なかどい・ひろき)

現在、河合塾では広島や大阪、京都など西日本各地の校舎に出講し、共通テスト対策から東大対策まで幅広く地理の授業を担当。全国模試や塾教材の作成にも関わる。趣味である入試問題研究や海外旅行の経験を存分にいかした熱く勢いのある授業が人気で、講習会では定員締切を出す。いかに生徒が地理を好きになってくれるか、そして本番で結果を出せるかを追求しながら、日々の授業を楽しんでいる。

 

 

後編はこちら

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