赤本の教学社

受験川柳

第10回「受験川柳」の結果発表をいたします。
たくさんのご応募、誠にありがとうございました。
また、第11回も募集いたします。

第11回募集要項

第10回 受験川柳 結果発表 応募総数2,913句

最優秀賞

その努力 微分をすれば 無限大 S(16歳)
作者のコメント

関数を微分するとその地点での傾きを表します。受験生はみんな毎日勉強時間と質を伸ばしているので、その変化の量、傾きは無限に近いことを表しています。

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尾藤川柳先生 選評

高校で微分や積分という概念を学び始めると、急に大人の世界に踏み込んだ気がしたのではないでしょうか。微分は、傾き。ある時期は、伸び悩むこともあったでしょう。またある時は、絶好調に学べる瞬間も…。過去ばかり思うのではなく、今の、そしてこの先の努力を思う時、その瞬間の伸びは「無限大」になる可能性も秘めているはずです。そのことに気づいたのは、「微分」という概念をまさに身に着けたからなのでしょう。16歳の等身大がここに。

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高校生特別賞

赤本に 描く未来の キャンパス図 ソララ(18歳)
作者のコメント

赤本を通して志望大学のキャンパスを思い描く受験生の心情を詠んでいる。

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尾藤川柳先生 選評

赤本に「未来」を垣間見るなんて、とても素敵。私は、問題の難しさと実力のギャップに打ちのめされたほうですが、ソララさんは、それを乗り越えた先がもう赤本に垣間見えたよう…。こんな前向きな受験との接し方なら、きっと成功は間違いないのでしょう。とても明るく、読み手にも力を分けてくれるような一句。

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優秀賞

  • 赤本に カバーをかける 月明かり 秋葉のこ(17歳)

    ずいぶん詩的な表現の一句。まだこの赤本の大学は、遠い目標のよう…。他者にはまだ知らたくない心理が「カバー」に働いたのか、長い戦いに備えて保護のためのカバーだったのか。陽光ではなく、「月明かり」というのが、そのまま、のこさんの心理を表象。僅か十七音に、目の前の赤本と自分の距離とが描かれました。

  • ひたむきに 解いたルートが 道となる 白川 譽(18歳)

    「ルート」は、「平方根」にも「道」にも重なる仕立て。数学の解を求める行為が、やがてサクラサク…へ到達するルートにも繋がるだろうという一句。結果ばかりを追い求めるのではなく「ひたむきに」という姿勢が、受験という長時間の試練への解であることを身をもって知ったのだろう。巧い一句。

  • 赤本と 共に過ごした 夜明け前 2050年生まれのコオロギ(17歳)

    もう直前に迫った受験。「夜明け」は、〈合格〉ということなのか、それとも、〈受験当日〉なのか…。最初は、遠い目標であった志望校。合格への一本の道を歩く伴侶として共に過ごした赤本は、ずいぶんと愛着のある存在になっていったのではないでしょうか。あとは「夜明け」を待つ覚悟のみ。受験生の心理が彷彿。

  • 単語帳 光るふせんの ネオン街 かえるの子はおたまじゃくし(18歳)

    ずいぶんと勉強に年季がはいりましたね。昔の付箋と違って今は、カラフルなものやキャラクターものまで。その色の一つ一つが、作者にとっては、単語との一期一会に向き合った証。この付箋のネオン発光が、やがて、合格という眩い光の中に包まれる瞬間に向けて積み重なっていく。描写体の表現が心地よい。

  • 赤本で 夢との距離を 推し量る かつどん(17歳)

    私は、高2の初めに志望校の赤本を手にした時、特に数学で全く手の出ない問題を見た瞬間、「距離」というものに打ちのめされました。やがて数Ⅲを学ぶにしたがって、やや距離が縮んだのを覚えています。かつどんさんの場合は、いかほどの距離を感じたかはわかりませんが、誰もが感じる「距離感」の言語化が見事。

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尾藤川柳先生 総評

「受験川柳」ももう第10回目。毎年、現役の受験生、そして受験期の思い出や、受験生へのメッセージを送ってくださる受験OBの皆さんの作品。それぞれの思いを私も自分のこととして楽しく拝見してきました。

今回は、若い世代のみの受賞になりました。まさに等身大の心理が句に表れ、「受験期」という特別な時間の作者心理が浮かび上がりました。多くの人が経験する「受験」というテーマでは、似たような思い出を詠まれた句も多くなります。過去の回想や受験についての概念だけではなく、今の受験と自分の立ち位置を捉えるような視点があるといいかもしれません。

いい句がたくさんありました。受賞を逃した句は、作者にとって残念なことではありますが、受験勉強の最中、川柳を作るということで、受験と自身について客観的に見ることができたのではないでしょうか。それは、決して無駄にはなりません。川柳を通して自身の気持ちが再認識され、言葉にすることによって、なにがしかのカタルシスにもなったと思います。

応募された皆様へ感謝申し上げるとともに、合格の栄冠を勝ち取られるよう心よりお祈り申し上げます。

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尾藤川柳先生

尾藤川柳先生 プロフィール

1960年東京生まれ。女子美術大学特別招聘教授。一般社団法人川柳文化振興会常務理事。祖父・三笠、父・三柳とつづく川柳家。2017年、十六代目川柳を嗣号。川柳作家としてだけでなく、「川柳学」の研究者としても活動、川柳記念館創設の運動を始める。川柳史料の散逸を防ぎ、収集・整理・保存・研究・公開を目的とした〈朱雀洞文庫〉主宰。著述および各地での川柳講座、講演、川柳展、公募川柳等で川柳の文化普及活動を行う。

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過去の受賞作品

第9回(2024年発表 応募総数3,258句)
最優秀賞
赤本に はさむ四つ葉の クローバー (ごまさん)
高校生特別賞
赤シート 見える世界は 無限大 (ゆうちゃん)
中学生特別賞
赤本と わかれる時は 新世界 (@*S3110)
優秀賞
このレ点 人生変える 分岐点 (山法師)
かじりつく 寒さを背負い 春を塗る (風を感じたピクルス)
受験でも ダンスは続け 二刀流 (みっちゃん)
難問に ぶつかるたびに 進化する (ユースタスリンリン)
この焦り 加速度aを 求めなさい (すずか)
第8回(2023年発表 応募総数2,992句)
最優秀賞
一浪を 「ひとなみ」と読む 母が好き (ヘミング麻衣ウエイ)
高校生特別賞
変わりたい そのきっかけに 赤本を (りんごあめ)
中学生特別賞
おかえりと 塾に言われる 長い夏 (Miriam)
優秀賞
クラス写真 ピースに混じり フレミング (ミンミンゼミ)
受験生 ウサギとなって かけ抜ける (ラーメンボーイ)
スマホ手に 赤本めくる 二刀流 (つきの)
かじかむ手 カイロ代わりの 単語帳 (りり)
過去問で タイムスリップ 未来まで (ありがとうさぎ)
赤本が 示す2人の さようなら (あいぷー)
レジに出す 第一志望は 胸を張り (らくちゃん)
第7回(2022年発表 応募総数3,692句)
高校生特別賞
赤本が 恋人だった 午前2時 (みみずく)
中学生特別賞
制服は テストの日だけ 勝負服 (さいしょくけんび)
優秀賞
難問に 心拍数が 爆上がり (黒ペン)
赤本を 勝負マスクで 解いていく (たまのいわし)
「頑張れ」の LINEをスクショ お守りに (おちび。)
マスク跡 写真に残る 受験票 (かばくんのかば)
赤本を 手に取る私 賢そう? (綾)
第6回(2021年発表 応募総数4,919句)
最優秀賞
制靴が 靴箱にある 3か月 (ウェーブ)
高校生特別賞
合格の バトンつなげる 体験記 (愛)
中学生特別賞
受験生 何をやっても 受験生 (山口)
優秀賞
オンライン 心の距離も ディスタンス (匿名希望)
コロナ禍に 知った受験の できる幸 (ちゅんすけ)
ページ端 兄の足跡 踏み越えて (玉砕丸)
赤本と 一緒に過ごす 夏休み (Momomitsu)
問題が 見直すたびに 七変化 (しんちゃん)
第5回(2020年発表 応募総数3,084句)
最優秀賞
志望校 優しい嘘を 知った春 (岩間さやか)
高校生特別賞
三学期 歩幅狭めて 帰る道 (ask)
中学生特別賞
赤本に ふせんの草が 育つ夏 (みゆみゆ)
佳作
赤本が 少し膨らみ 春が来る (ちゅんすけ)
合格しても一人 (一人はいやだ)
無駄のない ペンと足音 自習室 (をたちぃ)
夢の中 解けた数式 もう一度 (受験師匠)
第4回(2019年発表 応募総数2,162句)
最優秀賞
いつもより 解ける気がする 勝負ペン (明日やろうは馬鹿野郎)
高校生特別賞
参考書 蛍光色の 虹かかる (キプフェル大好き)
佳作
インスタで 推薦組が 弾けてた (ふたま)
絵馬の字も 風格のある 二浪生 (安田蝸牛)
うたた寝に 喝か毛布か 迷う母 (凛香)
ベクトルが 頭に刺さる 夢を見た (なべともあき)
教師より アプリに聞いた この進路 (らんす)
第3回(2018年発表 応募総数2,358句)
優秀賞
髪の毛と 勉強時間 のびていく (た)
高校生特別賞
E判定 逆転サヨナラ 下剋上 (ミニハルク)
佳作
がんばった 証の赤本 今もある (マイコ)
コンビニが 塾と我が家の 中継地 (さごじょう)
英単語 トイレで先に 父覚え (ねこねこぱんだ)
「君の名は」 あると信じる 掲示板 (ロックンビート777)
紅白の 合間に開く 単語帳 (moguchimo)
第2回(2017年発表 応募総数3,432句)
優秀賞
鉛筆も わたしも尖る 受験の日 (清水ゆん)
高校生特別賞
夢のなか 点Pずっと 動いてる (つぐちゃん)
佳作
今やると 言いつつ手には タブレット (匿名希望)
「冬休み」 受験生には ただの「冬」 (マリン)
赤本の 売り切れで知る 敵の数 (ししゃも)
古文にも 母の話も 主語がない (さごじょう)
おおみそか カウントダウンが にくらしい (A.S.)
第1回(2015年発表 応募総数2,303句)
優秀賞
人生を 決める小さな 選択肢 (とんがりトマト)
高校生特別賞
睡眠と 勉強息抜き 三角比 (匿名希望)
佳作
オリオン座 明日も勉強 頑張ろう (ひかり)
それとなく 聞き出す彼の 志望校 (あいあい)
アイドルの 曲で覚える 周期表 (ヤンヤン)
早起きは 三問のトク 受験生 (にゅうめん。)
赤本の 表紙隠して 持ち歩く (2009年九大受験生)
赤本を 枕にちょっと 一休み (だいちゃんZ!)
ちょっと待て Aはこんなに 続くのか? (あずき)
第11回募集要項

受験川柳

受験にまつわるエピソードや受験への想いのこもった川柳を募集します。受験勉強中にふと思いついたことや受験を終えて感じたこと、受験生を応援するものなど、なんでもOKです。楽しくユニークな作品や、思わずじんとくるような作品をお待ちしております。ふるってご応募ください。

募集期限

2025年9月24日(水)

賞品

応募作品のなかから最優秀賞などを選考し、賞品を進呈します。

募集対象

応募資格は問いません。
受験生のみなさま、受験生だったみなさま、受験生のご家族、先生など、ふるってご応募ください。

投稿作品

「受験」にちなんだ川柳(五・七・五の十七音)
※作品の説明(状況・心情)をあわせてお寄せください。
※応募数に制限はありません。

川柳とは?

赤本ブログにて、選評者 尾藤川柳先生の「受験川柳スペシャル講座『誰でもわかる川柳入門』」を公開しています。作品づくりの参考にしてください。

投稿方法

下記投稿フォームよりご応募ください。
学校等の団体で応募される場合は、団体応募用紙をダウンロードし、郵送でご応募ください。
団体応募用紙

応募規定
 ※必ずお読みください。

  • 1.
    応募作品は、自作で未発表のものに限ります。
  • 2.
    応募作品の著作権は作者にありますが、使用権は世界思想社教学社が有し、応募作品を紹介・出版・商品化する場合があります。
  • 3.
    応募に際し、取得した個人情報は上記目的および目的に関わる諸連絡以外に利用することはありません。