

志望校の判定はE。頑張っても届かないかもしれないという不安でいっぱいになる。だけど、諦めるか?と自分に聞いてみれば、いつも開いている漢文の句形が頭をよぎる。どうして諦めようか、いや諦めない。
下五の「反語形」がいかにも受験生らしい。めったに日常会話では使うことのない文型への意識は、それが作者の覚悟として伝わってくる。この意識の高さが、全ての受験勉強への姿勢として反映されているであろう作者は、きっと本番の受験でも勝者となるだろう。僅か十七音の短詩の中に「思い」や「覚悟」といった見えないものを描き出す力は修辞によるところが大きい。17歳のまっすぐな思いが、言語化された。

自分が解けない問題をAIに聞いて答えがすぐ返ってくるのがAIさまさまだなと思いながら、自分より受かりそうだと思った自分の情けなさを川柳にしました。
さてさて、ここのところ大いに進歩してしまったAI。川柳を作らせても上手いが、難問の解を求めてもスラリと解いて見せてくれる。AI様なら合格も間違いなさそうだが、何処からか解の元を持ち出してくるだけのAIは、画一的な正解しか与えてくれそうにない。人生は、10人いたら10通りの道がある。zakoさんの不安は、AIの一面を見ているのであり、あなたの可能性は、AIよりも遥かに広い世界を持っているだろう。この川柳が、しかり。

受験勉強のやる気が全く出ず、気晴らしに部屋の掃除をする様子を書きました。
誰もが陥りそうな掃除の罠。私も受験生時代はご多分に漏れず、掃除と絵を描くことに逃げ出していました。その受験勉強を逃げて絵を描くことが、後に美大で絵画材料を教えることにも繋がっています。目の前のやらねばならぬことに立ち向かうのは、覚悟のいることです。まっちゃさんは、中学生。自分の心の声を聴いて、その通りにすれば道は開けます。掃除がしたかったら、一度とことんやってみるのもあり。その先に真のやるべきものが見えてくるかもしれません。

マークシートでしょうか。「濃い目」は、ある意味自信の現れでしょう。その気持ちが、作者自身の合格への思い。意識がイメージ化されたいい句です。
これは大きな句。「人生の問」…「大銀河」のように見えてきます。人生にとっては、ほんの一瞬である受験も当事者にとっては、大銀河への冒険だったでしょう。
受験という異空間では、ただ時間ばかりが過ぎてしまうといった感覚を「摩擦係数0」とは、素晴らしい比喩ですね。物理に文学に「才能あり」といった一句。
なつかしい周期律の一節。私も化学系専攻でした。その元素の構成する宇宙が、受験後の未来。その夢は、元素や原子の概念から量子の夢へと拡がるかもしれませんね。
毎年拝見している川柳から受験生の生の声が伝わってきます。もちろん、毎年似た思いもありますが、時代とともに変わる受験生の心理も句に現れているようです。
受験勉強にAIというツールも入ってきたのでしょうか。
そんな句も少なくありませんでした。私の頃は、偏差値至上主義のところがあり、今は大学ごとの特色が際立ち、受験生にとっては自身の適性を見極める力が求められる時代。何時の時代も、受験生は、与えられた受験システムの中で一時期を過ごさざるを得ません。「摩擦係数0」という感覚もまた、受験期という特別な時間の現れでしょう。
川柳を作ることで、多少はカタルシスを得たことでしょうし、また入選句を読むことによっても「私だけでなかった」という共感も得られるでしょう。
さあ、これからが本番です。川柳と合否は別物。皆様の夢の成就を願っております。

1960年東京生まれ。女子美術大学特別招聘教授。一般社団法人川柳文化振興会常務理事。祖父・三笠、父・三柳とつづく川柳家。2017年、十六代目川柳を嗣号。川柳作家としてだけでなく、「川柳学」の研究者としても活動、川柳記念館創設の運動を始める。川柳史料の散逸を防ぎ、収集・整理・保存・研究・公開を目的とした〈朱雀洞文庫〉主宰。著述および各地での川柳講座、講演、川柳展、公募川柳等で川柳の文化普及活動を行っている。


2026年9月24日(木)
応募作品のなかから最優秀賞などを選考し、賞品を進呈します。
応募資格は問いません。
受験生のみなさま、受験生だったみなさま、受験生のご家族、先生など、ふるってご応募ください。
「受験」にちなんだ川柳(五・七・五の十七音)
※作品の説明(状況・心情)をあわせてお寄せください。
※応募数に制限はありません。
赤本ブログにて、選評者 尾藤川柳先生の「受験川柳スペシャル講座『誰でもわかる川柳入門』」を公開しています。作品づくりの参考にしてください。
下記投稿フォームよりご応募ください。
学校等の団体で応募される場合は、団体応募用紙をダウンロードし、郵送でご応募ください。
団体応募用紙