第5回 二次試験への備え方

第5回 二次試験への備え方

2022年 01月 17日

 私立大を受ける人は一般入試目前、国公立大を受ける人は共通テストが終わり、約1ヵ月後に迫る前期日程の出願校をやっとの思いで決めた頃でしょうか。

 いずれにせよ、残された時間でできることは、ひたすら勉強あるのみです。

 赤本ブログ『苦手な人のための受験数学』の最終回は、そんな迷っている暇のないみなさんの指針になれるよう、二次試験をはじめとした個別試験への備え方についてお聞きしました。

目次

 

 Q1 二次試験の直前対策で最も優先して行うべきことは何ですか?

 

 Q2 「理解した」ことを実際に「できる」ようになるためには、どんな訓練が必要ですか?

 

 Q3 二次試験対策で数学の苦手な人が注意しなければならないことは何ですか?

 

 Q4 本番の試験中に気をつけるべきことはありますか?

 

 住吉先生からのメッセージ

 

Q1 二次試験の直前対策で最も優先して行うべきことは何ですか?

 数学の苦手な人は「数学で点数を稼ぎたい」というよりは「足を引っ張っている数学をなんとかしたい」状況にあるのではないでしょうか。

 そんなみなさんには特に、「知っている」ことを増やすより、「知っているけれどできない」ことをつぶして、「できる」に変える勉強を心がけてほしいです。

 数学は、「知っている」と「できる」の落差が激しい科目です。

 公式を覚えて、そのまま書けば点数がもらえるような、インプットとアウトプットが直結している問題はありません。

 その上、第1回でも反復試行の確率の公式を例にとってお話ししたように、問題に「知っている」公式や典型問題の解法を当てはめられるだけではダメで、さまざまな概念やその性質を「理解した」上で、その時々の状況に合わせて、自分で考えることが「できる」、そして自力で計算「できる」必要があります。

 数学における「知る」「理解する」「できる」にはそれぞれ、以下のようなことが含まれます。

 数学の基本的な公式や概念、考え方については、おそらくテキストや参考書、問題集などで一通り学んでいるでしょうから、皆さんは最低限「知る」ところはクリアできていると思います。

 ネットで裏ワザなどといって紹介されている公式や性質に出会ってしまうこともあるかもしれませんが、「知る」は広げていくとキリがありませんし、そもそも入試で完璧は求められていません

 なので、特にこれから二次試験までの限られた時間の中では、無理に「知っている」の範囲を広げようとしなくて大丈夫です。

 大切なのは、「知っている」はずだけど忘れているものを思い出し、「理解し」直す、そして自由に使いこなすことが「できる」レベルに持っていくことです。

 第一志望が国公立の人であれば、1月が終わるまでを目標に、基礎のインプットに使ったテキストや参考書を使って、とにかく忘れていることをざっと一通り思い出し、自分が「理解し」ているかどうかを確かめましょう。

 苦手な分野を徹底するために補助的に使う場合を除いて、インプット用の新しい本に手を出すのは慎重に。理由は第2回でお話しした通りです。

Q2 「理解した」ことを実際に「できる」ようになるためには、どんな訓練が必要ですか?

 実践的な「できる」のレベルまで持っていくには、アウトプットの練習も必要です。

 国公立志望の人は、遅くとも2月になってからは、本番の形式を意識した演習を始めましょう。

 

 記述式の場合、少なくとも数回は頼れる先生に自分の答案を見てもらい、客観的にその答案が伝わるのかどうか判断してもらってください。 

 数学の答案は論理が全てです。

 答案を添削していると、「多分こういうことが言いたいんだろうな…」と雰囲気やパッションのみ伝わってくるものがあるのですが、それでは点数は与えられません。

 また、美しい答案を書かなければならないと思っている人もしばしばいるのですが、その必要はありません。

 内容は不器用でもいいので、わざわざ意を汲み取ってもらわなくても、あなたのことを全く知らない大学の先生が見てもわかるような、論理的な答案を書く必要があります。

 しかし、なかなか自分では、きちんと書けているのか、それとも雰囲気しか書けていないのか、その判断は難しいもの。ですから必ず数回は、客観的な視点で答案をチェックしてもらいましょう。

 

 マーク式・空欄補充式の場合は、第4回の『共通テストへの備え方』を参考にしてみてください。共通テストに比べれば大問ごとの傾向がはっきりしていないかもしれませんし、データや過去問・予想問題も豊富でないとは思いますが、勉強の姿勢は同じです。

Q3 二次試験対策で数学の苦手な人が注意しなければならないことは何ですか?

 先ほど、やるべきことについてインプット・アウトプットのお話をしました。

 これらを実践するときは、インプットの際は「必ずしも手を動かさなくていいこと」に、アウトプットの際は「しっかり手を動かすこと」に、それぞれ気をつけてください。

 数学の苦手な人を見ていると、真面目に丁寧にやりすぎて時間をめちゃくちゃ費やしてしまったり、効率を求めて適当な勉強をしてしまい、ほとんど何も得られていなかったりといった、コストパフォーマンスの悪い勉強をしているパターンが非常に多いです。

 インプットの目的は、「知っている」けど忘れていることを思い出して「理解し」直し、記憶すること。そのために手を動かさないといけない場面もあると思いますが、全ての問題・解答の全ての場面で手を動かす必要はないと思います。

 今まで忘れがちだったわけですから、1回時間をかけてやったところでまた忘れます。記憶に定着させるには毎日サッとでいいので見たり読んだりして、接触回数を増やすといいでしょう。

 一方で、アウトプットの目的は、初見の問題に対応する力をつけること(アウトプットに関しては第2回のQ3第3回の『過去問の使い方』も参考にしてください)。

 最終的に解答や解説を見て「なるほど、こう解けばいいのか」と筋道がわかったところで本当にできるとは限りません。

 特に数学の苦手な人は、この辺の見込みの甘いことが多いです。

 なるほど」と思ったことでも、それを答案に表現できるのか

 計算方法がわかっても自力で最後まで間違えることなく計算できるのか

 しっかり手を動かして確認しましょう。

Q4 本番の試験中に気をつけるべきことはありますか?

 試験中に必ず見直してほしいことは以下の3つです

・条件

 必要な条件を見逃していないか、または勘違いしていないか

・計算

 計算はミスなく正しくできているか

・問われ方

 解答が問われていることに対する返答になっているか

(例1)xの関数yの最大値に関する問題なら、最大値やそのときのxの値などのうち、どれを聞かれているのか。

(例2)証明問題なら、結論は何なのか

など 

 これらは3大うっかりミスポイントです。必ず意識的に時間をとって確認し、失点を防いでくださいね。

 とはいえ、練習でやっていないことは本番でもできませんから、アウトプットの際にこれらのことに気をつけ、ミスを自力で発見・修正する練習も重ねておきましょう。

 また、本番ではわからない問題がでてきても大丈夫です。逆に、もう少しで解き方がわかりそうでも、時間だけ食って道筋が一向に見えてこないのなら、それは沼です。

 いずれの場合も、満点を取る必要はないことを思い出し、落ち着いて次の問題に移りましょう。

 ここまででお話ししたように、この時期から本番の試験中までは一貫して、新しく「知った」知識による付け焼き刃で点数を稼ぐよりも、「できる」はずの問題で失点するのを防ぐことを意識した勉強をしていってください。

 本番で、もともとできないような問題が解けなかったときより、「できる」はずの問題をミスで落としてしまったときのほうが、精神的ダメージも大きいですからね。

 

★ポイント★

・まず「知っている」ことを確認し、忘れていたことは思い出して確実に「理解し」よう

・インプットの勉強は思い出すことが重要なので手を動かさなくてもよいが、アウトプットの勉強では必ず手を動かして練習しよう

・記述式の答案は、必ず客観的な視点で添削してもらう機会を作ろう

・試験本番では「条件」「計算」「問われ方」でのミスに気をつけよう

◎ 最後に、ラストスパートをかけている受験生へ、応援メッセージをお願いします

 大学受験に限らず、勉強というものは、すればするほど知らないことが出てくるもの。

 「完璧」は幻想です。でも、そこが面白い。

 わからないことが多いからといって嘆くのではなく、今は自分が「知っている」範囲でまずは何ができるのか、どうすればそれを「できる」に変えられるのか、よく考えて冷静に作戦を立て、その上でがむしゃらに勉強してください。

 そして大学に入った暁にはぜひ、新たな世界にどんどん飛び込み、思いっきり未知を堪能してくださいね。

 

 このブログをわざわざ見つけて最後まで読んでくださって、とても嬉しいです。

 みなさんのご健闘、陰ながらお祈りしています。

住吉 千波(すみよし・ちなみ)

河合塾講師、東進ハイスクール・東進衛星予備校講師などとして高校生や大学受験生に、個人では小学生から大人まで、幅広い層に数学を教えている。京都生まれ京都育ち。神戸大学大学院理学研究科数学専攻修了。河合文化教育研究所研究員。

 

 

これまでの連載
 第1回『受験数学の始め方』(2021年4月2日にアップ済み)
 第2回『夏休みの過ごし方』(2021年6月21日にアップ済み)
 第3回『過去問の使い方』(2021年10月15日にアップ済み)
 第4回『共通テストへの備え方』(2021年12月1日にアップ済み)

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

 

関連商品

         
 

大学入試シリーズ

大学ごとの過去問をまとめた入試問題集。志望校の対策、まずはこの「赤本」から!

 

赤本ノート(二次・私大用)

過去問を解きながら志望校の「傾向」を分析し、自分だけの「対策」を練ることができる学習ノート!フォームを埋めるだけで、自己分析や苦手発見ができます!

 

 
  2022年版「大学入試シリーズ」表1見本