第4回 共通テストへの備え方

第4回 共通テストへの備え方

2021年 12月 01日

 共通テストまであと1ヵ月半となりました。12月から、あるいは冬休み開始とともに、共通テスト対策に切り替えようと思っている人も多いのではないでしょうか。

 1ヵ月半という長いようで短い時間で学習効果をより高めるため、数学の苦手な人に特に意識してほしいポイントを、住吉先生にお聞きしました。

 

目次

 

   Q1 共通テストに向けて、受験生が身につけるべき力は何ですか?

 

  Q2 「時間さえあれば解ける」という人には何が必要ですか?

 

  Q3 数学力と形式対応力を鍛えるために、どのようなことをすればいいのでしょうか?

 

  Q4 数学の苦手な人がミスを減らすための方法はありますか?

 

  住吉先生からのメッセージ

 

 Q1 共通テストに向けて受験生が身につけるべき力は何ですか?

 共通テストに必要な力は、大きく分けて2つあります。

 1つは当たり前ですが数学力第1回第3回で考えたような数学の基礎力)、そしてもう1つは形式対応力(共通テスト独特の問われ方や時間設定、文章量などに対応する力)です。

 例え目標が高くても、得点率が現状7割に満たない人は、まだまだ数学力をメインに鍛える必要があります。12月に入って、周りがそろそろ共通テスト本番レベル・形式の問題を解き始めているかもしれませんが、流されてはいけません。

 結局は数学の試験なわけですから、基盤となるのは数学力特に共通テストでは、これまでのセンター試験以上に数学的思考力が必要とされています。

 もちろんこれまでも数学的思考力を問う出題はありましたが、問題の構造としては、誘導されるがままに突き進んでいけば、いろいろな値が求まって終わり、という一方通行のものがほとんどでした。

 しかし共通テストの数学には、振り返りと呼ばれる過程があり、ここでは「今までの考え方を応用すると…」とか、「これまでのことを一般化すると…」など、自分が今何を求めているのか、どういった状況にあるのか、といったことを俯瞰するよう求められます。

 つまり、闇雲に突き進んで解くだけではなく、より深い思考や問題への理解が求められるようになっているということです。

 そんなわけで、常日頃から「とりあえず答えが出せればいいや」では終わらせず、「なぜ?」「つまり?」といった点まで意識して勉強することが大切なのです。 

 

 一方形式対応力についてはよく、「慣れですか?」と聞かれるのですが、慣れとも言えるし、慣れでないとも言えます(笑)。例えば「寒さに慣れる」といった単純な目標だったら、何も考えずにとにかく毎日寒いところで過ごしていれば耐性がつくかもしれません。 共通テスト対策も数をこなし経験を積むことが大切という意味で、このような慣れが必要な側面もあるのは確かです。

 ただし数学は、センスがある一部の人を除いて、何も考えずに数をこなせば勝手にうまくできるようになるわけではありません。詳しくはQ4でお伝えしますが、自己分析とトライ&エラーを繰り返すことが重要です。 

 Q2 「時間さえあれば解ける」という人には何が必要ですか?

 「時間があれば解けるから数学力は大丈夫だ」と思っている人も多いのですが、そういう人は、時間がたっぷりあれば目標点を取れる、最低限の知識はあるのだと思います。しかし、それでも時間内で解いたときの得点率が例えば6割だとすると、残りの4割に手がつけられないほど解くのが「遅い」、または、残りの4割を間違ってしまうほど「正しく解けない」ということですよね。

 よくある問題に関しては、思い悩まず当たり前のようにやるべきことがわかったり、サクサクかつ正しく計算したりできる、もう一段階上の数学力をつける必要があります。

 Q3 数学力と形式対応力を鍛えるために、どのようなことをすればいいのでしょうか?

 ここでは、共通テスト直前の1ヵ月半を効果的に使うための勉強法をご紹介しましょう。

 Step1 今すぐ!

 

 まずは、自分の中で平均的な点数を取った模試の結果などを用意して、現状と目標のギャップを確認してください。

 最低限欲しい点数と、今の自分の点数の差を考えて、例えばその差が15点だったとします。その15点は、どの分野の、どこでなら取れそうですか?それらは、今まで考えや時間が及ばず手がつけられなかった問題なのか、単純なミスによって落としたところなのか、どうでしょうか?

 どの分野の、どういうところを伸ばせばいいのかを具体的に確認し、目標をより明確にしましょう。

 

 Step2 12月中

 

 分野別に数学力を鍛えましょう。必ずしも全分野を同じようにやらなくても大丈夫。Step1での分析を踏まえ、各分野の比重を考えて進めましょう。基礎のインプットに使った問題集や、共通テスト用の易しめの問題集等を使うといいと思います(基礎のインプットや問題集の選び方については第2回を参照)。

 加えて、形式対応力も少し伸ばすため、そして自分の間違い方の傾向を確認するためにも、共通テストの予想問題や過去問等を用いて、定期的に、本番に近い形式でのアウトプットも行いましょう。

 

 Step3 1

 

 形式対応力をつけるために、共通テストの予想問題や過去問等を用いて、解く→復習する→分析する→改善点を考えるのセットでトライ&エラーを繰り返しながら、アウトプットをたくさん行いましょう。

 

 いくら本番が迫ってきたとしても、時間内に安定して7割程度取れるようにならない限りは、並行してインプットも続けてください。

 

 ちなみに私は受験生のとき、1月に入ってからセンター試験本番までの2週間ほどの間は、予想問題パック等を使って、奇数日目は1日目の教科を、偶数日目は2日目の教科を時間割通りに解き、休み時間や夜に分析…という生活を送りました。いつもは学校かリビングで勉強していたのですが、時間割通り進めるために自分の部屋にこもり、眠くならないよう暖房をつけずにいたら、寒すぎて足がおかしくなったことをなぜか今でもよく覚えています(笑)。

 予想問題や過去問等でアウトプットする際の注意点としては、本番を意識するようにしてくださいね。

 特に、解答用紙にマークする時間も含めての制限時間なので、面倒臭いですがマークシートも使うこと。また、本番直後は自己採点して出願校を決めるわけですが、解答用紙は提出してしまうので、普段から問題用紙には自分が何をどう解答したかわかる形で書きこむようにしてください。

 Q4 数学の苦手な人がミスを減らすための方法はありますか?

 厳しいことを言いますが、「ミスった~」と言って、周りの人や自分を「ミスっただけなのか、じゃあ実力はもっとあるんだ」と思わせることはできるかもしれません。しかし、本番で点数処理をしてくれるコンピュータにそれは通じません。残念ながらあなたの“実力”ではなく、解答用紙に書いた通りのものが点数として計算されます。

 練習で起こすミスは、緊張している本番では起こす可能性がより高まりますただ「次からは気をつけよう」などと漠然と考えているだけでは、いくら強い気持ちがあってもなかなか直りません。本番までの限られた時間ではなおさらです。

 ミスをミスとして終わらせず、「練習のうちにミスっておいてよかった!これを本番でしないためにはどうしたらいいんだろう?」と冷静に考えましょう。

 数学力・形式対応力を強化するためには、そういった自己分析が必須です。

 計算間違いや条件の勘違いなどのミスについてだけでなく、時間配分や苦手な分野などを洗い出し、次に繋げていきましょう。

 例えば、

 ・プラスマイナスを間違いやすいなら、「カッコの展開をするときの計算は省略しない」や「すぐに見直しをする」

 ・問題文を読み間違いやすいなら、「必ず2回読む」や「大切な条件には印をつける」

 ・時間配分がうまくいかないと思ったら、「大問1題に割くのは15分までと決める」

など、具体的に改善案を考えましょう。そして次の回で実際に試してみて、さらにうまくいくように、改善案を改善していく…といった繰り返しをしていきます。アウトプットは、ただ単に回を重ねて慣れればいいのではなく、トライ&エラーを繰り返し、磨きをかけていくイメージで行ってください。

 今まで解けなかった1問が解けるようになって得る2点も、ミスして落とすはずだった1問を正しく答えて得る2点も、同じ2点です。本番までに、できる限りの穴を探して、失点しないための対策を考えておきましょう。

 第3回でお伝えした過去問の使い方は、共通テストの過去問や予想問題の使い方にも応用できますので、そちらも参考にしてみてください。

 

★ポイント★

・「自分が今何をしているか」を常に意識して問題を解くようにしよう

・目標点数までの課題を把握し、数学力と形式対応力の両面から対策しよう

・解いた後、ミスは必ず分析し、具体的な対策を考えて次に活かそう

 下のようなサイクルを繰り返して、ミスを減らしていけるのが理想です。

 

 

 ◎ 最後に、共通テストに向けて勉強している受験生へ、応援メッセージをお願いします

 共通テストは、まだ始まったばかりの試験。問題の作成者が昨年の結果を受け、より良い試験にしようとして、前回とは変わる部分が出てくるかもしれません。

 そうなれば多くの受験生は混乱するかもしれませんが、小手先のテクニックで何とかしようとせず(どちらにせよ何とかはなりませんが)、数学力をしっかりつけた人ほど、形式に左右されず、きちんと点数を取ることができるでしょう。

 また、周りと比べてしまって焦ることもあるかもしれません。確かに最終的な合否は他人との点差で決まりますが、日々の勉強は自分との戦いです。ライバルとは良き関係を築きながらも、自分がやるべきことを見極め、自分がやるべきことを行い、着実に勉強を進めていってくださいね。

住吉 千波(すみよし・ちなみ)

河合塾講師、東進ハイスクール・東進衛星予備校講師などとして高校生や大学受験生に、個人では小学生から大人まで、幅広い層に数学を教えている。京都生まれ京都育ち。神戸大学大学院理学研究科数学専攻修了。河合文化教育研究所研究員。

 

連載予定
 第1回『受験数学の始め方』(2021年4月2日にアップ済み)
 第2回『夏休みの過ごし方』(2021年6月21日にアップ済み)
 第3回『過去問の使い方』(2021年10月15日にアップ済み)
 第5回『2次試験への備え方』(2022年1月17日にアップ済み)

お楽しみに!

 

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