2024年度より、英検は、1級から3級において問題の出題形式が変わりました。注目すべきは、ライティングセクションで「要約問題」が出題されたことです。第2回検定試験が終わり過去問も公開されましたが、要約問題については、まだまだ不安に思っている人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、吉川大二朗先生に、2024年度第1回の問題を分析しながら、どんな対策をすればよいのか具体的にアドバイスをしていただきましょう。
英検、なにが変わった? 難しくなった?
まず、今回のリニューアルについてまとめると、リーディングセクションの問題を減らし(3級は変更なし)、ライティングセクションの出題数を1題増やしたということです。2級においては、リーディングセクションの問題は38問から31問まで減らされています。(詳しくは、英検の「問題形式リニューアル 特設サイト」https://www.eiken.or.jp/eiken/2024renewal/をご覧ください。)
ライティングへの負担が大きくなったように思われるかもしれませんが、これは考え方を変えれば受験者にとっては大きな安心材料となったといえます。これまで、このライティングセクションは、たった1題で、他のリーディングとリスニングのセクションと同等のスコアが与えられていました。ライティングの英語運用力をたったの1題で評価されるわけですから、受けた回の出題テーマが自分の答えやすい内容であれば幸運ですが、そうでなかった場合にはかなり不利な状況に置かれてしまいます。形式が異なるとは言え、問題が2題出題されることによって、そのようなリスクが減ったわけです。
また、級によっても若干の差はありますが、ライティングセクションの受験者の得点状況は、他のセクションと比べても比較的高い傾向にあります。ライティングは苦手だという受験者は結構いますが、時間をかけて粘り強く解答を書きさえすれば、それなりの評価を与えてくれるのがライティングセクションの特徴です。ですので、一般的には受験者にとって有利に働くようになったと考えるといいでしょう。
新形式の問題はどんな問題?
2級で新たに取り入れられたのが、英語の文章を英語で要約するというものです。2級の場合だと、150語程度で書かれた英語の文章を、45~55語程度の英語で要約するというものです。
2024年度第1回の問題を見てみよう!
記念すべき初回となる2024年度第1回では、「オンライン授業」に関する文章が出題されました。英文は3段落で構成され、各段落はおよそ45~55語程度でした。もちろん、全体像がつかめる題名(タイトル)は書かれていません。英検協会のホームページで公開されている模範解答では、この文章を、3つの英文(総語数49語)で要約していました。
模範解答を見てみると…
- 学生の中にはキャンパスに行かずにオンライン授業を受けている人もいる。
- オンライン授業には、移動時間を節約し、録画された授業を繰り返し見て理解を深めることができるといった利点がある。
- しかし、学生の中にはコンピュータの問題が生じることもあり、キャンパスで他の学生に直接会えないために孤独を感じる人もいるかもしれない。
以上のように要約されています。1文に用いられている英語の語数は10~20語となっていました。元の文章のおよそ3分の1の英語にまとめることになります。
また、試験のリニューアル前に公開されたサンプル問題も含めて、第1段落は主題の導入、第2段落はプラス面、第3段落はマイナス面を説明する構成をとっています。先だって行われた第2回検定も、見事に同じ文章構成、語彙レベルで出題されていました。今後も、この傾向は続くと思われます。
どのような力が求められている?
英検のホームページによれば、「複数の技能(領域)を統合した言語活動の充実」を図り、「知識や技能の習得だけでなく、コミュニケーションを行う目的や場面、状況等に応じた言語の運用を考える中で思考力、判断力、表現力等の育成」の必要性から、今回の問題改訂に至ったと述べられています。要約の問題は、主に思考力、判断力、表現力の育成を目指したものと考えられます。
わかりやすく説明すると、2級で求められているのは…
(1)それぞれの段落ごとの主旨を理解し(思考力・判断力)
(2)自分の言葉で適切にまとめ直して表現する(表現力)
この2つの力です。
実際の評価項目は、①内容、②構成、③語彙、④文法の4つの項目が0~4点で、合計して0~16点で評価されるわけですが、要するに、文章全体が伝えようとしている内容を、各段落の主張を取り入れながら、自分の言葉で正しくまとめる力が求められているのです。
これに加えて、準1級以上では具体的な内容を抽象的な表現に言い換える力が求められますが、2級の場合はそこまで意識する必要はないように思われます。2級の場合は、1つの段落の中で述べられている、筆者の考え(一般的には、1パラグラフ1アイデアと言います)を正確に理解し、文中の言葉を用いながらでも構わないので(可能であれば自分自身の言葉で)短くまとめる力が求められます。
2024年度第1回の問題を用いて説明してみます。第1段落では、43語で書かれた筆者の主張を、11語でまとめています。注目するのは、逆接を表す言葉(ディスコースマーカー)howeverです。一般的には逆接の表現の後には筆者の主張が述べられることが多いためです。そこには、However, there are other types of classes for students to take. と述べられており、その後に Some of them take online classes from home without going to the campus. とあり、段落が締めくくられています。ここが、第1段落の主張となります。
模範解答では、この主張を、Some students take online classes instead of going to the campus. と、instead ofという表現を用いてうまくまとめています。しかし、このような表現を用いるのが難しければ、文中の言葉をそのまま借りて、Some students take online classes from home without going to the campus. とまとめても、2級であれば、大きな問題はないと思われます(実際には、instead ofとwithoutには、とても重要な違いがある!のですが、ここでは大きな違いは生まれません)。
どのような対策をすればよいか?
書店ではすでに、級ごとにいくつかの対策問題集が出始めていますが、それらを利用しなくても、過去問を利用すればかなりの量の演習を行うことが可能です。ただし、2級の過去問ではなく、準2級や3級の過去問が役に立ちます。
この要約問題の文章は、2級のリーディングセクションの英文よりも、かなり簡単な表現を用いて書かれています。そのレベルは、準2級のリーディングセクションの大問3と3級の大問3ーCの間くらいとなっています。よって、レベル的にも、これらの問題を使い、要約の練習をすることは効果的な対策と言えます。
ただし、これらの長文の段落構成は、「主題の導入→プラス面→マイナス面」といった形式には必ずしもなってはいません。あくまでも、各段落で述べられている筆者の主張(1パラグラフ1アイデア)を自分の言葉でまとめる練習にはちょうどいいという意味でお勧めをします。
自分がまとめた各段落の要点が正しいかどうかを確認するには、教学社が出している「英検準2級過去問集」「英検3級過去問集」(英検赤本)の解説が役に立ちます。教学社の過去問題集では他の長文問題も含めて、解説では必ず「各段落の要旨」が日本語でまとめられているのです。ただし、「各段落の要旨」は日本語で書かれていますので、もしも自分がまとめた英文に自信がなければ、英語を教えてくださっている先生に添削をお願いしたり、オンライン上の文法チェック機能を利用したりして、確認するとよいでしょう。(オンライン上の文法チェック機能の積極的な活用については、準1級以上を目指す学習者にお勧めしています。気になる人は準1級のブログをご覧ください。)
このような形で、過去の準2級の大問3や3級の大問3-Cの長文問題の文章を利用して、段落ごとに10~20語程度の英語でまとめる練習を繰り返せば、段落ごとにまとめる力がかなり身につくはずです。
今、教学社の英検準2級や3級の過去問題集を持っていて、これから2級にチャレンジしようと思っている方は、合格したからといってすぐに友達や兄弟姉妹には譲ってしまわずに、手元に置いておいて活用し、しっかりと要約問題対策を行うことをお勧めします。人に譲るのはそれからでも遅くありません。
さいごに
この英語の文章を英語で要約する問題は、準1級、1級でも出題されています。そして今後、大学入試においても出題の頻度が増える可能性が十分に考えられます。2級レベルの要約問題でしっかりと高得点を取れるように力をつけ、準1級レベルの要約問題にも対応できるように鍛えておけば、大学入試で英語での要約問題が出題されたとしても、確実に解答する力が身についているはずです。頑張ってください!
吉川大二朗(よしかわ・だいじろう)
立命館慶祥中学校・高等学校教諭。1976 年、京都市生まれ。
小学生を対象に英検5級から、中学高校生を対象として1級までを指導。Be curious! Be critical! Be creative! を指導のモットーとして、学生が楽しみながら英語を習得できる授業作りを目指して日々格闘中。中高一貫英語教材『NEW TREASURE Third Edition』シリーズ(Z会出版)の編集・執筆協力。高校検定教科書「CROWN 論理表現 Ⅰ」(三省堂)執筆協力。「竹岡の英検マスターシリーズ」(教学社)共著。
関連書籍
『英検2級過去問集(2024年度版)』
ISBN978-4-325-26062-2
定価1,760円(本体価格1,600円)
教学社編集部 編
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