1時間「国語」に向き合えますか? 小池先生に聞く過去問活用術!

1時間「国語」に向き合えますか? 小池先生に聞く過去問活用術!

2021年 11月 15日

 

「過去問取り組み始めたけど、現代文ってどうすればいいの?」「類問が出るわけでもないし、対策しようがなくない?」と思っている人、多いと思います。しかし、実は現代文こそ、過去問の取り組み方が重要になってくる科目なのです。大人気講師の小池陽慈先生が、現代文での「赤本」の使い方を伝授してくれました!


こんにちは。現代文講師の小池陽慈です。今回は現代文の過去問演習についてお話します。やり方を間違えると、ただただ時間を浪費するばかりになってしまう過去問演習。 どうすれば皆さんが「赤本」をより有意義に使うことができるのか、そのポイントをまとめてみました。ぜひご参照ください。

【目次】

演習時のポイント 

 演習テーマその1 スピードトレーニング

 演習テーマその2 「体力」の養成

 演習テーマその3 「苦手な大問」を集中的に鍛える訓練

演習後のポイント

 復習テーマその1 本文理解

 復習テーマその2 設問理解

最後に

 

〇演習時のポイント――「スピード・体力・苦手克服」

過去問は、演習のテーマをきちんと設定したうえで取り組むことが大切です。 「指定された時間のなかで集中して解き続け、そして解き切る」ということの大変さは、定期テストや模試などでも、身に染みて感じているのではないでしょうか。 こうした困難に立ち向かうためにも、以下の点を意識して演習をしたいですね。

演習テーマその1

時間内に解き切る訓練① スピードトレーニング

 

・一つの大問、あるいは本文の読解や個々の設問につき、どのくらいのペースで解けば解き切ることができるのか、いわゆる時間配分を身体に沁み込ませるための演習。

 

・当然、指定の試験時間を厳守し、すべての大問を解く。

☆多くの受験生を悩ませる「時間配分」ですが、結局は、演習を重ね、慣れていくことが大切です。 まさに「身体に沁み込ませる」というイメージですね。

演習テーマその2

時間内に解き切る訓練② 「体力」の養成

 

・国語全体で、すべての大問を指定時間内に解き切る「体力」を身につけるための演習。

 

・当然、指定の試験時間を厳守し、すべての大問を解く

大問ごとに区切って演習すれば解けるけれども、1時間にも及ぶ試験時間の中で、すべての大問を一気に解くと途中で集中力が途切れるなどという経験はないでしょうか。

指定時間にすべての大問を解くという経験を重ね、試験に耐えうる体力を身につけましょう。

演習テーマその3

「苦手な大問」を集中的に鍛える訓練

 

・自分が「苦手と感じる大問」について、複数年度分その大問のみを演習する。

 

・大問一つにつき、演習時間の目安は概ね20分~30分程度

 

一度演習した問題で取り組むのも可。ただしその場合は、演習時間を厳しめに設定する。

*以上、演習テーマその1~その3について、演習時間はそのテーマ上当然厳守する必要があります。ただし、指定の試験時間を超えてしまった場合も、演習は続行してかまいません。その場合は、時間超過で答えた設問に関しては不正解扱いで採点しましょう。

 

〇演習後のポイント――「現代文の復習」って何するの?

 

これはすべての科目について言えることと思いますが、

現代文についても、過去問演習は、演習時より演習後の復習のほうが大切になります。

とはいえ、他の科目についてよく言われる「苦手な単元を見つける」、「その学校の出題傾向を知る」等については、現代文に関してはあまり有効な観点とは言えません。 「単元」という観念がないに等しい科目ですし、あるいは「出題傾向」についても、せいぜい「記述が出題される」とか「言語知識の問題が多い」とか、その程度しか確認することはできないでしょう。

そのような”分析”は、何も演習などしなくとも、設問をざっと見るだけでわかるはずです。

では、こと現代文という科目において、過去問の復習はどのように実践すれば効果的なのでしょうか。

復習テーマその1

本文理解

受験の現代文、とくに評論文においては、その文章の扱うテーマという点で、明らかに「流行りのモード」というものがあります。ひと昔前であれば、デカルト哲学に代表される近代的な諸価値を批判する文章や、あるいはソシュール言語学を参照する文章が頻出しました。

近年では、国民国家批判やグローバリゼーション、新自由主義、民主主義、あるいは監視社会等の出題が目立ちますね。ジェンダースタディーズや、そしてアガンベンという哲学者を援用する文章なども、今後は要注意です。

(編集部注:これらの語彙に馴染みがない人は、小池先生がnoteで連載されている記事なども参考にしてみてくださいね!

なんであれ、繰り返しますが、受験の評論文には「流行りのモード」というものがある

となれば、過去問演習後に取り組む最も効果的な復習は、本文の徹底的な分析であると言えるのではないでしょうか。 その文章をとことんまで精読することで、その文章とテーマや論点、あるいは論証の仕方を共有するような文章を、より正確に、かつ、スピーディーに読むことができるようになる これは実際の試験において、相当なアドバンテージになるはずです。

 

具体的には、本文の話の展開を、ノートなどに自分でまとめることをおすすめします。 冒頭段落から着地点までの話題のつながり方を、フローチャートのように整理するイメージですね。そのうえで、可能であれば、要約にも取り組んでみてください。 選択肢も含め、意味のわからない語句は辞書や用語集などで調べ、「意味調べノート」のような形でまとめておきましょう。

↑とある生徒Sのノート 

小池先生のコメント:「文章全体の展開を、端的に図示することができています。特に、対比の構造についてはかなり正確にまとめられました。ただし、単語やフレーズの抜き出しが中心になってしまっており、筆者の主張するところがやや見えにくい。もう少し、「文章」としてのまとめも付加したほうがよいかもしれません。」

復習テーマその2

設問理解

間違えた設問のみでかまわないので、「どのように考えれば正解にたどり着くことができたのか」という分析をしましょう。

自分の口で解答プロセスを説明できるようになる ことが肝要です。

間違えた漢字や語句知識、文学史等については、「意味調べノート」にまとめ、しっかりと暗記しておきましょう。

<補足>

・解く順番は、志望順位の高い順に。

 ⇒志望順位の低い学校から解き始めた結果、志望順位の高い学校の過去問についてはあまり解くことができなかった…などということにならぬように。志望順位の低い学校については、直前に1~2年分解くくらいでかまいません。

・解く年度の順番はご自由に。

 ⇒古い年度から始めてもよいですし、最新年度から始めてもかまいません。

・受験校の過去問をやり終えてしまったら。

 ⇒余裕があれば、志望する学部以外の、その大学の過去問にも挑戦してみましょう。

〇最後に

今回のアドバイスは以上になりますが、気をつけてほしいのは、 「完璧主義には陥らない」 ということです。 もちろん、ここにまとめた内容を演習のたびに実践することができればかなりの力はつきますが、様々な理由で時間が取れないこともあるでしょう。

完璧にすべてをこなす受験生などいません。

その際には、「今日は2時間だけ過去問の復習をする!」などと決めて、その中でやれることをやれば、大丈夫です。

 


プロフィール

小池陽慈先生 早稲田大学教育学部国語国文科卒業。同大学大学院教育学研究科修士課程中退。河合塾・河合塾マナビスでは現代文を担当し、教材作成の全国プロジェクトメンバーでもある。国語専科塾博耕房では作文を指導。単著に『無敵の現代文記述攻略メソッド』(かんき出版)、『大学入学共通テスト国語[現代文]予想問題集』(KADOKAWA)、『一生ものの「発信力」をつける! 14歳からの文章術』(笠間書院)、『小池陽慈の 現代文読解が面白いほどできる基礎ドリル』(KADOKAWA)。共著に、紅野謙介編『どうする?どうなる?これからの「国語」教育』(幻戯書房)、難波博孝監修『論理力ワークノートネクスト』(第一学習社)。川崎昌平『マンガで学ぶ〈国語力〉』(KADOKAWA)、および『大学入学共通テスト 突破演習 現代文編』(三省堂)では、監修も担当している。noteブログ https://note.com/gendaibun で、現代文学習や読書などについての記事を無料公開中。